ドラマ「ハケンの品格」をみて思うこと

2007年放送の前シリーズから13年後の続編。

篠原涼子さん演じるスーパー派遣大前春子が活躍するドラマ。

こんなに何でもできるスーパー派遣なんか実際はいないよ、と思いながらも楽しく見ている。

あの年齢でこれだけ多くの資格を持っているには無理があると矛盾を感じずにはいられないが、それはひとまず置いておいて。

実は私にも派遣社員だった時代がある。

私は人間関係、雇用形態など、最初の職場に不満があり、数年勤めた職場を退職。

次にやりたいことがみつからずひとまず派遣会社に登録した。

その時代、派遣は新しい働き方ということで注目されており、多くの派遣会社が存在していた。

ちょうど学生時代の友人が、勤めていた職場が過酷で体を壊し退職、そして派遣へ転職していた。

時給の良さ、残業なしなどその働き方にとても満足し、生き生きしている姿をみて、私も派遣になることに迷いはなかった。

会社に縛られず、わずらわしい会社のしきたりや人間関係にとらわれず、ただ与えられた仕事だけをしていればいい、まさにこのドラマの大前春子のような考え方になった友人は派遣社員になったことで自分を取り戻したようだった。

私の周囲だけでいえば、社員になれないから派遣ではなく、社員が嫌になり派遣になる、自分の時間を優先したいから派遣になる、という考えをもった人が多かったように思う。

そして、私のように特殊なスキルもないただの事務職でさえも、高い時給をもらえていた派遣黄金期だったように思う。

企業側もまだまだ派遣を受け入れるのが初めての会社ばかりで手探り状態だったように感じた。

そのせいか、会社の社員たちはとても気を遣ってくれていたし、ドラマのように私たち派遣社員に対してぞんざいに扱うようなことは決してなかった。

社員と差別したり、蔑むような言動や行動なんかはほぼなかった。

残業をしないように気にしてくれたし(残業代が割り増しというのもあったが)、残業になりそうな場合は申し訳なさそうに丁寧にお願いされた。

会社の飲み会があれば、支払いは全て男性が払ってくれたし、バレンタインに義理チョコを配れば、ホワイトデーには3倍返し以上のお返しをくれる。

私にとってはよい待遇だった、心地よい職場だった、という記憶しかない。

同じ職場で働いていた同僚派遣は、その会社の男性社員と交際をはじめ、後に結婚。

それ以外でも男性社員と付き合っていた派遣も多かった。

当然、不倫もいたが。

数か所の会社に派遣されたがいずれも同じように居心地はよかった。

たまたま私が派遣された会社の待遇がよく、運がよかったのかもしれないが。

一方、長期契約の予定のはずが、次の更新はされずに契約終了してしまうパターンももちろんあったが、派遣はそういうものだと思っていたし、自分の能力の無さだとも感じた。

時代が移り変わり、今は派遣切りや契約打ち止めなどひどい扱いもあると聞く。

ましてやこのコロナ禍で真っ先に首を切られるのは派遣社員。

致し方ないとはいえ、時代の流れは感じる。

私はつくづくいい時代に派遣をやっていたなと思わざるを得ない。

今現在、このドラマのように派遣は肩身の狭い思いをしながら働いているのだろうか。

派遣を知らない人たち、このドラマで派遣という働き方を知った若者たちは、この先、「派遣」という働き方はきっと選ばないんだろうなと思ってしまった。