寒くなる前にとコタツがけを洗っておこうと、大型洗濯乾燥機があるコインランドリーへ出向いた。
その日はまだ夏の様な暑さで晴天。こんな日はコインランドリーは空いているだろうと思ったが予想通りガラガラ。
駐車場には車が一台止まっていて、室内にはイスに座っている年配女性が一人見える。
それでも数台ある大型の洗濯乾燥機は稼働中ばかりで、かろうじて一台分が空いていた。
持ってきたコタツがけを入れて設定する。久しぶりで設定方法に戸惑い、そして小銭しか使えないことに気付いて側にある両替機で両替したりと稼働させるまでに時間がかかってしまった。
その時、先に来ていた年配女性の洗濯が終わったようで、私の真横で洗濯物を取り出し始めた。
しかし、その女性が横にきたとたん、ものすごく視線を感じる。チラチラと私を気にする様子がうかがえる。
私は気づいていない振りをしてやりすごしたが、何だが気味が悪かった。
私が彼女の知り合いに似ていて声をかけるか戸惑っているのだろうか。横顔だと確信が持てずにチラチラ見ているのだろうか、など考えたが、彼女の方を向く勇気が持てずに気付かない振りを続けた。
誰?なんなの?ここ使っちゃダメなの?何が言いたいの?私の頭の中は疑問と不安でいっぱいだった。
コインランドリーの中は二人きり。昼間とはいえ、相手が女性といえ、この時代何が起きるかわからない。
とにかく気付かない振りを貫いて、機械の設定を終えるとそそくさと駐車場に戻った。小一時間はかかるので一旦家に戻る予定だ。
車に乗り込んでふと目についたのは、助手席に置かれたマスク。
あ!なんと私はマスクをしていなかった。家を出る時はしていたのだが、車に乗り込んだ時にあまりの暑さに外したままだったのだ。
あの女性が私のことを見てなにか言いたげだったはこれだったのかとようやく気付く。
訳が分からず気持ち悪い人だなと思ったけど、そういうことかと納得。
このコロナ禍でマスクをしていない私を非常識に思ったのだろう。だから声を出さずに無言の圧力をかけていたのだろう。
無意識でうっかりしていた行動とはいえ、やはり私のミス。非常識だった。
でもだったらちゃんと言ってくれればいいのに。ちゃんと声を掛けてくれればいのに。
怖かったし、てっきり不審者だと思ってしまったではないか。
まあ、自分が逆の立場だったらやっぱり言えないだろうけど。