近隣に頻繁に救急車がくる家がある。
最初はどうしたんだろうと心配になったが、あまりに頻度が多いため、またあの家かと軽視するようになった。
その家は我が家から少し離れているので、家族構成やいったい誰が呼んでいるのかなど状況は全くわからない。
いつも救急車は我が家の前の道路を通りすぎて角を曲がったらすぐ止まる。夜であれば、赤色灯の光でも停まった場所に気付かされる。
だからまたあの家だなとわかってしまうのだ。
その後、サイレンを鳴らすことなく、赤色灯を光らせることもなく、知らぬ間に救急車は去っているため、おそらく病院に搬送されることはないのだと思う。搬送するほどの症状ではないのだろう。
持病があって頻繁に具合が悪くなってしまうのか、それともたいしたことがなくても不安になって呼んでしまうのか…。
私の友人にも何度か救急車を呼んだことがあるという女性がいる。
今は結婚し家族と住んでいるが、結婚するまでは一人暮らしが長かった。
地方出身で大学入学を機に上京。卒業後はそのままその地で就職し、ずっと一人暮らしだった。
元々体が丈夫な方ではなかったうえに、一人暮らしで食生活が乱れてますます体調を崩しやすくなった。
彼女は以前外出時に具合が悪くなり、意識が遠くなる寸前で近くにいる人に助けを求めて救急車を呼んでもらった。そして目が覚めたときは担架に乗せられて救急車に運ばれる途中だったという経験がある。
それ以来、家に一人でいる時に少しでも具合が悪くなると急激な不安に襲われるという。
このまま倒れて誰にも発見されなかったらどうしよう、倒れた時に打ちどころが悪くそのまま死んでしまうかもしれない、などと考え始めるといてもたってもいられず、まだ動けるうちに電話に手を伸ばして救急車を呼んでしまうのだとか。
私も以前、今までに経験したことがない激しい腹痛と嘔吐に襲われて救急車が頭をよぎったことがある。
幸いにも夫が在宅しており、近隣の救急病院を探しつつ痛みに耐えながら様子を見た。1時間程で痛みは治まり救急病院に行くことも救急車を呼ぶこともなかったが、もし夫が不在で一人だったら呼んでいたかもしれない。
だから彼女の気持ちはとてもよくわかる。
その近隣の方も彼女と同じような不安の中で救急車を呼んでしまっているのかもしれない。
軽々しく救急車を呼ぶものではないのは百も承知だが、実際具合が悪くなった時、はたしてどれだけ具合が悪ければ救急車を呼んでいいのかなんてわかるわけがない。
私や彼女の様に、その時一人なのか、そばに誰かいるのかなどの違いで、心の持ちようもきっと変わってくるのだろう。