昨年末にようやく父の認知症の検査ができた。間違いなく認知症。
以前、認知症かもと母から聞いていても、私はさほど深刻には考えてはいなかった。
実際、父に会うたびにいつもとあまり変わらない父がいて、年相応の物忘れぐらいにしか私には感じられなかった。
しかし、私の名前がなかなか出てこなくなり、そのあたりから一気に父の様子がおかしくなっていた。
夜になると家に帰りたいと訴える。自分は会社にいて、仕事が終わったから帰らなくてはならないと言い出す。
しかし帰り方がわからない。お金も持っていないため、電車に乗ることもできないという。
なだめるが言うことを聞かず、外に出ようとするため、仕方なく母も一緒に外に出る。
数分で落ち着くときもあれば、寒空のなか、長時間ウロウロと歩き続けることもあるという。
トイレに行きたい、眠いなどのきっかけで、ようやく家に戻ることができるようだが、
時には、遠くに行きすぎて、タクシーで帰ることもあるそうだ。
母が気づかない間に一人で外出し、道に迷ってしまえば迷い老人になってしまうのだろう。
いわゆる徘徊。そんなこと私の身内に起こるとは思わなかった。他人事だと思っていた。
今住んでいる地域では、たびたび防災無線が流れてくるが、そのほとんどが迷い老人の探索願いの放送。
いままでは、またか、と聞き流していた。迷い老人多いね、と家族で笑いながら話していた。
我が家には全く関係ないことだと思っていた。
それが今は他人事ではないのだ。
今現在、父と一緒に住んでいるわけではないし、実家は遠方。
いざ父が徘徊し、迷い老人になってしまっても私にはなにもできない。
そばにいる母は気が気ではないだろう。
いまとなっては、なんでこんな実家から離れた場所に住んでしまったのだろうと後悔する。
この地に住むことを決めたころは両親の老い、ましてや認知症になるなんて考えもしなかった。
今の私にできることは、頻繁に帰省して母を労うことしかない。
もどかしさが募るばかり。