どうやら父はもう、私のことはわからないらしい。
赤の他人ではないのは感じているらしいが、名前もでてこない。
父の発する言葉もなにをいっているのかわからないことが増えた。
現在と過去の記憶が交錯する。
今見ていたテレビの内容と現実が混ざり合ってしまう。
トイレには間に合わず、常に排泄はオムツになってしまった。
そして、介護する母に対して反抗的になり、時には手が出ることもあるそうだ。
しばらく帰省しないうちにだいぶ認知症が進んでいるようだった。
はっきりいって帰省を避けていた。
もっとも、子のことやパートのこと、そして実際遠方であることで、帰省のタイミングが調整しづらいのは事実なのだが、どうにもできないほどではなかった。
現状、デイサービスやショートステイも利用するようになっていたため、母の負担は減っているはずと言い聞かせ、帰省を避けていた。
実家近くに住む身内に多くを任せていた。
父の現実を受け入れたくない気持ちと、母の愚痴を聞きたくない気持ち。
そして、掃除が行き届いていないあの汚い実家に帰りたくなかった。
だから「そんなに無理して帰ってこなくていいよ、大丈夫だから」という母の言葉に甘えて帰省していなかった。
いざ帰省すると、想像していた以上の惨状。
嫌気がさした。帰省せずに申し訳なかったという気持ちよりも嫌悪感が勝った。
そんな風に思うなんてひどい娘だと思う。
なんて親不孝な娘だろうと思うが、でも正直な気持ち。
しかし、ほおっておくことはできない。
これからどう向き合っていけばいいのだろう。気持ちの整理がつかない。
悩みばかりが増えていく。